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精神疾患は「ネットワーク医療」で社会復帰を目指す

精神疾患は「ネットワーク医療」で社会復帰を目指す
高橋 龍太郎(たかはし・りゅうたろう) 医療法人団こ事長

1946年山形県生まれ。65年慶應義塾大学医学部に進学するも4年で中退。71年東邦大学医学部入学、77年同大卒。79年東京都立駒込病院麻酔科入局、80年慶応大学医学部精神神経科入局。医局在局のまま慈雲堂内科病院勤務。86年東京都立荏原病院勤務。90年タカハシクリニック開院、院長。94年医療法人社団こころの会を設立、理事長。2002〜06年都精神科診療所協会副会長、14年東京都功労者表彰。2500点以上を所有する現代アート収集家として、国内外で巡回展覧会を開催。著書は『仕事も人間関係も「いっぱいいっぱい」にならない方法』『楽しくいきいき、認知症予防!』など多数。


◆1990年、東京・蒲田に現在のグループの拠点であるタカハシクリニックを開業した時、当時は珍しかった「精神科デイケア」を大きな柱に据えていますね。

高橋 ずっと地域に根を張る活動をしています。開設したころの精神科のデイケアのイメージは、公立の病院が郊外である種の作業療法として行っているというものでした。統合失調症はただでさえ閉じこもり傾向や嫌人傾向があります。そのような人たちにクリニックに来てもらうには、単なる作業療法だけでは無理だろうと思いました。飽きてしまいますからね。当クリニックでは、彼らの好奇心を満たすためにジャズダンスや英会話、料理など一般のカルチャーセンターのようなプログラムをたくさんつくりました。統合失調症も長く患う中で認知機能の症状が出てくるといわれているので、認知の改善という意味で頭をどんどん働かせてくれるプログラムも取り入れています。講師には、外国人や女優も名を連ねています。もちろん作業療法士や精神保健福祉士、看護師も加わっています。

入院せず地域に暮らしながら治療する

デイケアの目指すものは何ですか。
高橋 患者さんの社会復帰です。典型的な例は、統合失調症で引きこもりだった方が3年ほど当クリニックに通ううちに自信を取り戻し、生活支援施設に移行して、就労支援組織のサポートによって社会復帰していくケース。それが「ネットワーク医療」です。東京都大田区は就労支援の組織がとてもたくさんあるので、最終的にそこに結び付けていくというイメージです。デイケアに通ってくる患者さんも社会復帰を目指してはいるのですが、逆にここの居心地が良いとなると居ついてしまうケースもあります。我々としては、患者さんの居心地が悪くては都合が悪いし、良過ぎてもあまり芳しくないという微妙な空気を読まなければなりません。いったん社会復帰した後にまた症状が出て、もう一度デイケアからという人もいます。

ネットワーク医療の考えを教えてください。
高橋 精神を病んでも、できるだけ入院せずに地域にいて、地域のいろんな人たちと触れ合いながら、地域で就労していくという循環をつくりたいということです。その中でデイケアは核としての存在になると思います。外国には日本ではまだできていない先進的な取り組みがあります。ネットワークの核となる地域の拠点が24時間体制で何らかの形で患者さんを追って行き、SOSが出たらいつでも対応できるような仕組みです。イタリアなどで既に運用されており、入院患者を半減させるような結果を生んでいます。日本でも各区にその拠点が一つあればいいと思います。しかし現実はというと、さまざまな医師や看護師、ケースワーカーなどが24時間対応できるシステムづくりはなかなか難しいのですが、私の現役期間をあと5年として、その間に取り組んでいきたいですね。

ネットワーク作りの課題は何ですか。
高橋 今は入院していた人が退院して地域に戻っても、状態が悪くなった時にはすぐにまた入院というサイクルになっています。日本には10万人の精神疾患の入院患者がいますが、人口比でいうと欧米の3〜5倍。入院しないで地域にいる、一時的に状態が悪化したら地域の医療チームで対応するというのは、我々も厚生労働省も理想とするところなのですが、実際に手を上げる地域医療の部隊が少ない。政府の提唱する地域包括ケアシステムは福祉寄りのプラン。医療寄りの包括プランを医療者も厚労省も考えていかなければならないと思います。そうしなければ、10万人の入院患者は減っていきません。ところが精神科救急を地域において24時間体制でフォローするとなると、人材や保険制度などを含めて問題が山積しています。

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