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第18回未来の会

第94回「アロマセラピー」を医療に活用する 補完代替医療として医療費削減にも寄与

第94回「アロマセラピー」を医療に活用する 補完代替医療として医療費削減にも寄与

日本ではアロマセラピーというと、美容やエステのイメージが強い。しかし、欧米では古来より医療の現場で使われてきた。アメリカでも補完代替医療として注目されている。そのエビデンスと効果を塩田清二理事長に聞いた。

◆アロマセラピーをめぐる最近の動向は? 塩田 アロマセラピーのエビデンスがさまざまな研究によりだんだんと分かってきているところです。特に、認知症の患者さんについて芳香療法の実験を続けていますが、物忘れが改善したり活動的になったり、食欲が出て夜もよく眠れるようになったりしています。夜のナースコールや徘徊も減ることになりますから、施設スタッフにとってもプラスになっています。また、遺伝子レベルの研究では、生活習慣病の予防や治療につながることなども分かってきています。

◆アロマセラピーは医療にも活用できるのですね。 塩田 はい。私たちは医療の中でアロマセラピーを使うための研究を行っています。一つの医療として体系付けるためには、エッセンシャルオイル(精油)が人体にどう作用するのかというエビデンスをもっと明らかにして、西洋医学的な研究デザインでも検証することが必要です。西洋医学の薬は単一成分でできているので、エビデンスが確立しやすく集中的に人体に作用します。その代わり、効き過ぎや副作用という弊害が起きます。アロマセラピーが薬と違うのは、生薬成分ですから単一成分ではないこと。漢方と同じで主成分は分かるものの、その他の微量成分の働きまではなかなか追求できていない点がエビデンスレベルでの検証が難しいところであり、一方でプラス面でもあります。

◆具体的なプラス面は? 塩田 例えば、ラベンダーは主成分が酢酸リナリル・リナロールで、それ以外にもいろいろな成分が入っています。そのさまざまな成分が中和されて、多種多様な働きがトータルで穏やかに、そして長時間にわたって私たちの脳や身体に作用していきます。また、天然物のため人体に害のあるものは少なく、健康を考えるとメリットは多大にあるのです。

◆そもそも学会設立のきっかけは? 塩田 アロマセラピーは1980年代後半に美容で使っていたイギリスから日本のエステティックサロンに入ってきました。しかし、エッセンシャルオイルの知識不足による間違った使い方により、接触性の皮膚炎が多発したのです。そこで、医療関係者が正しい指導をする団体が必要ということになり、日本アロマセラピー学会が1997年に発足しました。現在、正会員数は約2000人。半数近くが看護師で、残りは主に医師と薬剤師が半々です。正会員以外に、医療関連の学生会員と、企業を対象とした賛助会員もいます。

個人、医療施設、企業別に資格を認定

◆学会として主にどのような活動をしていますか。 塩田 第一に、年1回の学術総会で会員間の交流を図っています。研究発表をしたりシンポジウムなどに参加したりすることが重要な活動と考え、今年で19回目になります。第二に、セラピスト認定制度を運営しています。正会員対象の資格は「基本認定」と「トリートメント認定」で、医療施設や医療科を対象とした資格は「施設認定」です。アロマ認定医師およびアロマ認定看護師がいる病院で、アロマセラピーを正しく実施できる施設・診療科であることを認定しています。学会内に看護部会や薬剤部会があり、各部会で資格認定をしているので、例えば看護師は看護部会が行ったセミナーで認定を取得します。また、エッセンシャルオイル・メーカーなど企業の賛助会員向けには、精油精度委員会が学会の基準に合う精油を作っているかどうかを審査して「精油精度認定」を出しています。第三に、アロマセラピーのエビデンス集や用語集、標準テキスト、学会誌などの刊行物の発行です。標準テキストは基礎編、臨床編、実技編(DVD付)の3巻を出版し、書店でも販売しているので、一般の方でも購入して勉強できます。

◆各地域でも活躍していますね。 塩田 地方会・部会があり、それぞれ活動やボランティアもしています。例えば、熊本地震では九州地区の看護部会員が中心になり、数カ所の避難場所にテントを立て、被災者を対象にアロマによるハンドマッサージや全身マッサージを行いました。車中の避難生活でエコノミー症候群になったり血液の巡りが悪くなって血栓が起きたりと問題になりましたが、アロマトリートメントが役立ったと被災者の方々から喜ばれました。

低コストで最大限の効果を得られる策

◆日本の医療に置けるアロマセラピーの意味は? 塩田 先進医療では高額薬剤の問題があります。また、終末期医療は助ける医療ではなく、延命する医療となっています。しかし、限られた財源の中で、医療費だけを無制限に増やすことはできません。大事なのは患者さんのQOL(生活の質)を上げることです。実のところ、厚生労働省は補完代替医療、統合医療を導入しないと日本の医療は経済的にパンクしてしまうことを認識しているのです。ですから、私たちもアロマセラピーの効果・効能、ガイドラインを作成し、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)へ3年以内に報告書を出す方向にあります。アロマセラピーによって、患者さんの自然治癒力を最大限に引き出せれば、医療費の節約にも貢献できます。そのために、アロマセラピーを医療の現場で活用して役立てることが学会のミッションです。

◆エビデンスが重要になってくるわけですね。 塩田 いま、日本のアロマセラピーの研究は世界のトップといわれています。それはデータ集積がどんどんできて研究レベルが年々着実に向上しているからです。フランスやベルギー、ドイツではエッセンシャルオイルを飲み薬として医師が処方し、治療に使う場合もあります。最近の研究では、エッセンシャルオイルを飲んだ時に、どのような生理作用があるのかを動物実験しています。そこから分かったのは、ある特定のエッセンシャルオイルを薄めて飲むと、高脂血症の脂質代謝系に作用し、脂肪を分解する働きがあり、生活習慣病の予防や治療に役立つことです。まだまだ解析中のものもあり、他にどういう遺伝子に効果があるかは研究中です。

◆今後の取り組みは? 塩田 アロマセラピーは芳香療法(香りを嗅ぐ)として始まったのですが、実際に皮膚に塗ると、鎮痛作用をもたらし痛みを抑制したり、火傷などの炎症を抑えたり、服用すると消化器系の酵素にも働き、免疫系にも効果があることが分かってきています。遺伝子レベルでアレルギー反応を抑える働きがあり、ぜんそくや花粉症にも役立ちます。花粉症の時にハーブティーを飲まれる方もいます。アロマセラピーに生理的な薬理作用があることがどんどん分かってきているので、もっと学術的に突き詰めて研究していきたいと考えています。

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