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第100回 社会保障財源確保に赤字国債発行の余地

第100回 社会保障財源確保に赤字国債発行の余地

 安倍晋三首相が消費税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期する方針を表明したことで、社会保障の財源は大きく制約を受けることになった。首相は「子育てや介護分野は進める」と強調するものの、2度目の増税延期とあって、厚生労働省内からは「社会保障・税一体改革は空中分解だ」との悲観論が聞こえてくる。

 「賃金を上げるということだ。社会保障を先送りしないのが肝。アベノミクスの成果を使い、優先順位を付けてやっていく」

 6月26日、NHKの報道番組に出演した自民党の稲田朋美政調会長は、アベノミクスによって社会保障財源を生み出すと強調し、財源をどうするつもりかと問いただす野党に強く反論した。

 首相が増税延期を決めたのは6月1日。「世界経済が大きなリスクに直面している」などと理由を語った。また、増税で得られる分から約1.3兆円を充てる予定だった社会保障の充実に関しては「税率を10%に引き上げた場合と同じことをできないことはご理解いただきたい」と述べる一方で、介護、保育職の賃上げなどは着実に実施する考えを示した。

 もともと政府は、消費税率を10%に引き上げる代わり、▽年金の受給資格を得るための保険料納付期間(現在25年)を10年に短縮▽低所得の年金受給者に月最大5000円を配る制度の導入▽低所得高齢者の介護保険料軽減措置の拡充——などの社会保障充実策を実施すると約束していた。

 いずれも自民、旧民主、公明の3党合意に基づき、12年8月に関連法が成立した「社会保障・税一体改革」に盛り込みながら、14年の増税延期の際に完全実施を見送ったものばかりだ。年金保険料の納付期間の短縮には300億円、5000円を配る制度には5600億円が必要になる。消費税に代わる財源を「アベノミクスの果実」と言うだけでハッキリさせない政府に対しては、自民党内からも「増税は延期するが社会保障の充実策はやりますというなら、こんなおいしい話はない。だが、若い人たちはだまされない」(小泉進次郎農林部会長)といった批判が出ている。

 首相官邸は当初、年金関係の充実策は先送りする腹だった。しかし、無年金になるはずだった人の中にも「受給資格を得られる」と期待し、保険料を払い始めた人は少なくない。「14年の増税延期に続いて、また期待を裏切ることになる」との厚生労働省年金局の懸念などを伝え聞いた首相は、参院選への影響も考慮し、「無年金の問題は喫緊の課題だ。前向きに検討したい」と姿勢を転じ始めた。それでも、桁違いの財源を要する5000円の給付制度に関しては、まったくめどが立っていない。

 18年度は医療と介護の同時報酬改定となる。増税延期は診療報酬改定にも大きく影響する。厚労省には「振る袖はない。薬価の頻回改定を真剣に考える必要がある」と踏み込む主要幹部もいる。

 社会保障の財源に関し、民進党は「赤字国債の発行」を主張している。安倍首相は「無責任」と酷評しているが、自民党内にも「手足を縛らないよう、赤字国債発行の余地は残しておくべきだ」(厚生族幹部)と考える議員も少なくない。

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