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第76回 ニコランジルによる潰瘍

浜 六郎 NPO法人 医薬ビジランスセンター(薬のチェック)代表

hama6はじめに
ニコランジルは硝酸剤の一種だが、一般的な硝酸剤では生じない粘膜・皮膚潰瘍が生じる。一方、カリウム(KATP)チャネル開口剤であるため耐性はできにくいとされている。ニコランジルの耐性の有無、潰瘍形成の機序として挙げられているニコランジルの代謝物(ニコチン酸とニコチンアミド)説、KATP開口剤作用との関係について考察する記事を、薬のチェックTIP誌65号1)に掲載したので、紹介する。


ニコランジルによる潰瘍の頻度
欧米では、口内潰瘍は0.2%~5%(NNTH=500~20)、肛門潰瘍は0.07~0.47%(NNTH=1400~214)であった。潰瘍の頻度には、用量-反応関係が認められ、1日30mg超で著しく高頻度となり、発症までの期間も短い。

日本における文献報告
日本でも、医中誌Webの検索により25件の文献、合計37例の潰瘍例が報告されていた。主には口腔潰瘍16例、舌潰瘍16例、そして、肛門周囲潰瘍、大腸潰瘍、出血性小腸潰瘍、舌/結腸/肛門潰瘍、回腸穿孔がそれぞれ1例であった。最も厳しい例は、回腸穿孔のために手術が行われていた。日本の常用量(1日15mg)の範囲内でも、潰瘍が生じ得る。

ニコランジルによる耐性
ニコランジルが一般的硝酸剤よりも耐性が生じ難いように見えるデータもあるが、経口で1日2回、2週間使用で、プラセボと比較して運動負荷時間に差がなくなっていた。このランダム化比較試験の結果は、耐性はできることを明瞭に示している。15mg1日3回分服では耐性は、より出現しやすいと考えられる。

潰瘍発症機序はナイアシン過剰ではないだろう
潰瘍発症機序は、主に代謝物のニコチン酸とニコチンアミド(両者は相互変換があり、「ナイアシン」はその総称)の過剰が関係しているのではないかとしている文献がほとんどであったが、その根拠は乏しい。

組織損傷の修復機転阻害が主であろう
 一方、ATP感受性カリウム(KATP)チャネル開口剤としてのニコランジルは、脳梗塞において、神経膠細胞(グリア細胞)による炎症反応を抑制する。ニコランジルがKATPチャネルを開口する機序は、SU剤やガチフロキサシンの作用(KATPチャネルを閉じ、電位依存性Caチャネルを開き、Ca2+が細胞内に流入し、インスリンを分泌させる)と逆である。すなわち、電位依存性Caチャネルを閉じ、さまざまな細胞、特に免疫系-炎症系細胞の活性を阻害し、創傷治癒遅延に働く。従って、何らかのきっかけで、粘膜や皮膚にできた創傷の治癒機転が障害されると考えられる。これが、硝酸剤には全くなく、ナイアシンにはほとんどないにもかかわらず、ニコランジルには存在する粘膜潰瘍形成の主な作用機序と考えられる。
プラセボ対照ランダム化比較試験で延命効果は報告されておらず、脱落が多い。

まとめ
ニコランジルは、硝酸剤の性質として耐性があり、一般の硝酸剤にないカリウム(KATP)チャネル開口剤としての創傷治癒阻害作用のため、粘膜や皮膚に潰瘍を高頻度に生じる。急性期に用いられる注射剤以外使用すべきでない。

参考文献
1) ニコランジルによる潰瘍多発の規模と機序、
薬のチェックTIP:2016:16(65):64-65

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