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分科会第2回

第92回 大甘処分

第92回 大甘処分
第92回 大甘処分 南淵 明宏(昭和大教授) 

 化血研の血液製剤の製造方法が認可されたものとは違っていた、とお役所がお怒りだ。

 「あそこはいつも『いちへんスルー』なんですよ」

 今回の事件は不正が巧妙に隠されていた、のではなく、役人のあからさまな依怙贔屓の露呈ではないのか。

 「新聞を読んで心配になりました。うちの母の手術でも化血研の血液製剤を使ったのでしょうか」

 「40年間隠していたって怖いですね。東洋ゴムの4万個に匹敵しますね」

 医療現場は混乱している。医療者は対応を余儀なくされている。医療者にこんな顕著な実害が出ているのに、化血研は何も言ってこない。

 海外なら逮捕者が出る事案だが、どうやら今回も一部営業停止などの大甘処分で終わりそうだ。行政の「製造認可」など体裁にすぎないのだろう。利権の維持の道具にすぎないのである。

 化血研の製品では「健康被害はなかった」とされている。

 うそだと思う。

 「あの会社のアルブミンって血圧が下がるのよねぇ」

 「あそこのフィブリン糊を使うと術後患者がしばらく熱を出すんだよね」

 死人に口なし、という諺もある。術後の合併症の多くは化血研の製品のせいかもしれない。

 それにしても、私は化血研という会社が嫌いだ。

 あるとき営業マンが来て、自慢げに「うちは全て国内で調達している血液から作っています」。

 「なんで国内調達にこだわるの?」と尋ねると、「役所からも血液製剤は100%国内調達にするように指針が出されています。純血主義なんです」と書類を見せられた。

 どうして「国内調達=純血日本人の血」なのだろうか。

 「誰でも日本人の血液を輸血してもらいたいでしょ」と彼は付け加えた。

 アフリカ系の方の血液を輸血してもらったら、足が速くなりそうな気がするのは私だけだろうか。それに、そもそも日本人の定義って何? 八紘一宇の大使命に仇する危険思想である。

 「外国人の血液なんて何が混じっているか分からないじゃないですかぁ!」

 何が混じっているのか分からないのは化血研の方だ。

 ところで、この種の悪事の内部告発は監督官庁で普通に無視されるか、本当に問題なら通報を受けた監督官庁がすぐに悪徳企業に知らせて通報者を見つけ出し粛正する、というのが定石であったはずだ。

 同様な不正の内部告発を検討している製薬会社の諸兄姉は今回の化血研の告発事例を大いに参考にすべきだろう。

 企業はズルするし、役人は権力者の言いなりだ。マルクスが言うように、資本は資本増加のためにのみ活動し、膨張することだけで命脈を保つ。経営者も役人も、世間に出回る商品の使用価値など何ら気にとめない。大企業の経営者など人が何を思って製品を使うのか、何ら関心はないということだ。下賤な金融屋、虚業家に成り下がってしまった。

 粉飾決算の東芝やデータねつ造の東洋ゴムの病理も同様である。日本企業の製品はどれもこれからろくなものは期待できまい。そろそろあちらこちらで株価つり上げのボロが出てくるころだろう。

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