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第93回 「患者の窓口負担増」と「保険適用の範囲縮小」は不可避か

第93回 「患者の窓口負担増」と「保険適用の範囲縮小」は不可避か

kourou2 経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本は2013年の国内総生産(GDP)に占める医療費(介護費なども含む)の割合が10・2%に達した。加盟34カ国中8番目の高さ。厚生労働省は長らく、医療費の対GDP比が低い点を挙げて「日本はまだ国民に医療費の負担増を求めることが可能」と説明してきた。しかし、そうした主張は根拠を失いつつあり、さらに医療費抑制へとかじを切らざるを得なくなっている。


「来年度の診療報酬改定にも響くね」。11月4日に公表されたOECD世界主要国の医療費データを眺め、厚労省幹部は深いため息をついた。

2000年代、日本のGDPに占める医療費の割合は7~8%台で推移し、OECD加盟各国の真ん中あたりに位置してきた。一方で国民皆保険制度に基づく医療へのアクセスの容易さ、世界トップクラスの長寿が国際的に評価され、厚労官僚や医療関係者は胸を張ってきた。

ところが、10年にGDP比は9・6%となり、OECD平均(9・3%)を初めて上回った。医療費は高齢化や医療の高度化に伴って増え続けたのに、経済の低迷でGDPは伸び悩んだためだ。

12年には対GDP比が10・3%に達し、13年も10%台でOECD平均(8・9%)を上回り、12年の数値が「瞬間風速」ではなかったことを裏付けた。13年時点で1位の米国(16・4%)には及ばないものの、以前ははるか先をいっていた5位の独(11・0%)、6位の仏(10・9%)に迫っている。中でも公的医療費の対GDP比は8・5%で、オランダ(9・7%)、スウェーデン(9・2%)などに続く5位。このため、財務省は厚労省の予算に一層厳しい視線を注ぐようになった。

OECDによると、日本の医療費の対GDP比が高まっているのは、09年以降、保険適用の医薬品が毎年約5%ずつ増え続けていることが要因の一つという。国民1人当たりの費用は752㌦で、1026㌦の米国に次いで加盟国中2位だった。このデータは日本の医療保険制度の見直しに大きく影響している。政府は今年、価格が安い後発医薬品の割合を数量ベースで80%(13年度約58%)に引き上げる目標を打ち出したが、これは日本の金額ベースの後発薬割合が11%にとどまり、OECD平均(24%)を大きく下回っていることが背景にある。16年度の診療報酬改定でも、後発薬の普及と価格引き下げは主要テーマに設定された。

「負担能力のある人の保険料を増やせば、財源は確保できる」。次期診療報酬改定をめぐり、日本医師会の横倉義武会長はそう訴える。だが、厳しい財政事情の折、厚労省は今回、8年ぶりのマイナス改定を覚悟している。横倉氏も11月25日の記者会見で、医師の技術料に当たる「本体」はともかく、薬価も合わせた全体の改定率については「全体の上げ下げの議論が必要か」と述べ、引き下げ容認を示唆せざるを得なかった。

もっとも、財務省や経済界が注目するのは、国や企業の負担増に直結する公的医療費の対GDP比だ。

厚労省幹部は「(保険料や税財源の)『入り』を増やすことは今後どんどん難しくなる。その分、患者の窓口負担増は避けられないし、保険の適用範囲も縮小せざるを得なくなるだろう」とつぶやく。
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