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第89回 サブカル医療

第89回 サブカル医療
第89回 サブカル医療 南淵明(昭和大学教授

 若い医師たちには今の医療の世界はどう映っているのだろう?

 総合病院を中心にあちこちに救命救急センターが作られて救急医療のシステムはずいぶんと拡充した。

 小さな民間病院に救急車はもう来ない。診断や緊急手術においても診療点数が病院の規模であからさまに差別されるようになった。

 新しい医療技術には施設基準が設けられ、端的にいえば、病院の規模で明白な線を引かれてしまった。医療は確実に二極化しつつある。そこに勤務する医者もそこにかかる患者も二極化しつつあると言えなくもない。

 こんなご時世を若い医師たちがどう見るのだろうか。

 拡大、拡張が当たり前だった1950年代生まれの私たちとは違い、生まれてずうっとマイナス成長の世の中で育った彼らには、ネガティブな事態がどれだけ起ころうと免疫ができていて、そう悲観的ではないのかもしれない。

 だから、前述の悲観論は年寄りの愚痴にすぎないのかもしれない。

 しかし、二極化はやはり、今そこにある現実だ。お金をかけまくる医療と、それに取り残された医療の二極化である。

 TPP(環太平洋連携協定)の取り決めで医療分野も海外からの波動をもろに受けかねない。

 それを利用して、海外からの患者、特に中国からの富裕層をなんとか日本に呼び寄せようとする試みは、これから本格的に始動するかもしれない。

 お金をふんだんにかけて、できる限りの付加価値をかける医療が、ビジネスとして成り立つのである。

 具体体にはCT、MRI、超音波などありとあらゆる診断装置を施術中に駆使して小さな傷で治療する。

 「こんなことをして一体いくらかかるんだ?」

 「こんな治療は今国際的に問題になっている難民の人たちには決して縁はないだろう」

 誰もがそう思う。

 再生医療が現実化したとしても、やはりそういった豪奢な治療の域を超えないと想像する。

 これには企業のみならず、行政もサポートすることだろう。お金が動くからである。

 新しい医療とは、新しく儲かる医療なのである。

 素晴らしい医療技術であればあるほど、

 「誰が払うの? そのお金?」

 新技術が向けられるのは、限られた人たちだけである。

 つまり「新しく儲かる医療」はどこまでも広がるマーケットではない。Blue oceanにはなり得ない、ということだ。

 純粋に医学や医療技術からみた特異な分野を「subspecialty」と呼ぶが、ロボット手術など、さらにごく限られた医師による技術には「super」を付けて、「super subspecialty」と呼ぶことがある。

 豪奢な設備投資の恩恵を受けながら高額な医療を執り行う分野は社会とのつながりを考えてみた場合、そんな医療は富裕層の特殊な患者しか受けようとしない、という事態を招くのであれば、これはもう「super subculture medicine」と呼ぶべきであろう。

 「サブカル医療研究会」の発足である。

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