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事件、スキャンダル、盟友の離脱で 揺らぐ「楽天コンツェルン」

 2014年は楽天にとって鬼門だったようだ。3月には「楽天市場」のスーパー(安売り)セールで楽天社員自ら指示した割引偽装事件が発覚。前年11月に大騒ぎになった東北楽天イーグルスの日本シリーズ優勝記念セールの価格不当表示事件に続く騒動だった。

 その直後には三木谷浩史会長兼社長の右腕であった国重惇史副社長が25歳も年下の女性との不倫が週刊誌に暴露されて辞任。旧日本興業銀行出身の三木谷氏に対し、国重氏は旧住友銀行出身で、行員時代にMOF(財務省)担当を務めたエリート。かつて大蔵省(現財務省)、日本銀行を揺るがす大騒動に発展した「ノーパンしゃぶしゃぶ」接待を考案したと金融界で広く信じられている。住友銀行と外資ネット証券との合弁証券会社「DLJディレクトSFG証券」社長を経て楽天入社後は三木谷氏の右腕となり、同氏に唯一意見を言える人物といわれ、政府の検討会に同氏の代理として出席。それだけに国重氏辞任後の楽天を不安視する人も多かった。

「薬ネット販売の草分け」を子会社化
 10月には楽天傘下のケンコーコムで、創業者の後藤玄利社長が辞任。後藤氏は一般用医薬品や健康器具のネット販売を開拓した。09年施行の改正薬事法に合わせて改正された薬事法施行規則(厚生労働省令)で、一般用医薬品のうち第一類医薬品と第二類医薬品のネット通販が禁止されたことに反発、訴訟を起こし、最高裁判所で「薬事法で規定していないことを省令で規制するのは憲法違反」との判決を勝ち取った。

 その結果、薬事法は再改正され、劇薬やスイッチ後間もない第一類医薬品28品目(現在は27品目)を除く一般用医薬品全てのネット販売が解禁された。このネット販売の是非をめぐる過程で、三木谷氏が「医薬品のネット販売を認めるべきだ」と声高に叫び、厚労省の検討会でもどう喝もどきの発言をしたことで、マスコミの注目を浴びた。そればかりか安倍晋三首相がアベノミクスの第三の矢の目玉に医薬品のネット販売解禁をうたうまでになった。こうした一連の動きの中で、ケンコーコムは楽天に第三者割当増資を行い、12年に楽天の傘下に入った。

 後藤氏は東京大学教養学部卒業後、外資のアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュァ)に入社。5年後に退社し、実家の製薬会社に入るが、じきにケンコーコムを設立し、健康食品や医薬品のネット販売を始めた。医薬品ネット販売の草分けだ。

 後藤氏は第一類医薬品の中で指定28品目のネット販売ができないことを批判。「合理的・科学的根拠に基づかない指定」だとして、差し止めを求めた。また、処方箋薬のネット販売を禁止するのは違憲として、13年に行政訴訟を起こした。

 ケンコーコムは14年早々に「ヨヤクスリ」なる処方箋薬予約サービスを始めた。内容は患者が処方箋をスマホでケンコーコムに送信し、受け取りたい薬局を選択すると、ケンコーコムから薬局に処方箋が転送され、患者が薬局に来たときには処方されているというサービスだ。8月には「オンラインおくすり手帳サービス」を加え、服薬履歴が瞬時に分かるシステムにした。

 スタート当初は調剤薬局に突然、処方箋がファクスされたため調剤薬局が戸惑ったりクレームをつけたりしたが、今では全国3万8000調剤薬局が加わっている。「ケンコーコムはネット調剤を狙っているのに、多くの調剤薬局が目先の処方箋欲しさに協力している」と眉をひそめる薬局もあるが、日頃、調剤薬局で待たされている患者の中には待ち時間がなくなって便利だとの評もある。

ケンコーコム・後藤社長辞任の真相
 「ネット販売の方が五感に頼る対面販売より優れている」と主張する後藤氏は「IT技術は日進月歩。これからはEC(電子商取引)の時代だ」と呼号。声高にネット、ネットと叫ぶ三木谷氏に引けを取らない人物だ。

 ところが、後藤氏は14年8月、10月に辞任する意向を突然発表した。「三木谷氏と衝突した」「意見の食い違いがあったらしい」等々、詮索されたのも当然といえば当然だが、後藤氏は「楽天グループとのシナジーを最大化することにより企業価値を向上させるのにふさわしい経営陣に移行するのが最善と考えた」としか語らない。それでも三木谷氏との間に考えの相違が生じたという説が有力だ。その根拠とみられているのが、「楽天市場」で展開する酒や水、日用品をまとめて販売する「楽天24」事業のケンコーコムへの譲渡だ。アマゾンと比べて楽天市場に日用品店舗がないことから、三木谷氏は楽天24を10年に始めた。だが、アマゾンとの差は歴然だし、ヤフーとアスクルが始めた日用品通販サイト「ロハコ」にすら抜かれる事態になり、建て直しのために楽天24を14年1月にケンコーコムに譲渡した。

 後藤氏にとっては「親会社による資本の論理で楽天24を押し付けられた」(関係者)との思いだ。後藤氏は製薬会社で育ち、医薬品の世界をしている。利益率の高い医薬品であるからこそケンコーコムの収益も高かった。さらに後藤氏は一般用医薬品の10倍の規模を持つ処方箋薬への進出も見据えていた。最も利益率の低い日用品ネット販売をやるようにいわれても、気が乗らなかっただろう。

 ケンコーコムの14年12月期の第3四半期決算は前の第2四半期に続いて思わしくなかった。第3四半期間の累計(14年1〜9月期)の売り上げは約152億円で、13年4〜12月より7%増の10億円増を記録したが、営業損益は2億5300万円の赤字で、最終損益も3億7700万円の赤字。それも赤字幅が拡大した。既存事業のケンコーコムのセグメント利益は黒字だが、楽天24のセグメント損失は2億1600万円の赤字と大きい。

 後藤氏辞任後のケンコーコムは「新規事業である楽天24は7〜9月期の売り上げが8億5600万円に達し、前年同期の倍。営業損益も55億円の赤字だが、赤字幅は3分の1に縮小し、計画通り堅調に売り上げを伸ばし、赤字を改善している。ただ、既存事業のケンコーコム分野がカバーできなかった」と強調したが、楽天24がケンコーコムの足を引っ張っているのが実態だ。

 楽天24を引き継いだ時、後藤氏は「仮想商店街である楽天市場はたびたびイベントを行ってバーゲンセールで売り上げをつくってきたが、楽天24はエブリディ・ロープライスのチャンネルにしないと持たない」と語っていた。くしくも三木谷氏はアマゾンやロハコを追い越そうとするあまり、楽天24でもイベントセールを重ねた。その結果、楽天24は赤字が拡大。困り果ててケンコーコムに押し付けたといっても過言ではない。

 楽天のビジネスである仮想商店街は、縁日で地面に線を引き、綿アメ屋はここ、金魚屋、お面屋、焼きソバ屋はこっち、と屋台を配置すると同じようなものだ。縁日が楽しいのと同様、楽天市場がたびたびイベントを繰り広げ、安さと楽しさを提供するのは当然といえるが、日用品は縁日にそぐわない。赤字が膨らむのも当然で、それを押し付けられた後藤氏が嫌気が差すのもおかしくない。

 後藤氏退任後、ケンコーコム社長に就任した橘田尚彦氏は旧東京銀行(現東京三菱UFJ銀行)出身。銀行から企業再生ファンドのMSKパートナーズ、KKRジャパンを経て楽天に入社。食品宅配の楽天マートの社長を務めていたといっても、金融やM&A(企業の合併・買収)の世界を知悉した人で、薬事法を筆頭に規制だらけの医薬品の世界に精通しているとは思えない。医薬品中心のケンコーコムをうまく切り回せるか疑問が残る。同じ銀行出身の好誼で三木谷氏は期待しても、社員や周囲は心配、不安がいっぱいだ。三木谷氏は「楽天24の売り上げ目標を100億円」と豪語したが、その後、目標は「30億円」にしぼんでいる。売り上げが思ったほど急増しないケンコーコムにも、楽天24にも熱意がなくなったのではないかという声すらある。

「会社ごっこ」でグループ膨張
 三木谷氏は次々と企業を買収して楽天ブランドに変えてきた。DLJディレクトSFG証券は楽天証券に社名変更し、あおぞらカードは楽天クレジットとなり、さらに楽天カードに変わった。旅行代理店の旅の窓口は楽天トラベル、国内信販は楽天KCに社名変更し、イーバンク銀行は楽天銀行に変わり、ビットワレットは楽天Edyという具合だ。

 ある大手銀行の幹部は「楽天コンツェルンというより、会社ごっこみたいだ」と評したが、アマゾンへの対抗心なのか、ソフトバンクの孫正義氏を意識しているのか、拡大し過ぎではないのか。もちろん、東北楽天イーグルス(社名は楽天野球団)のように高く評価されるものもある。しかし、今、女房役の国重氏が辞任し、ケンコーコム創業者の後藤氏が去り、盟友が次々に三木谷氏から離れていくようにさえ映る。こんな状態では三木谷氏が唱えた「楽天経済圏」も〝仮想の経済圏〟になりそうである。

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