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オリンパス

オリンパス
損害賠償請求訴訟を抱えながら 内視鏡頼みの危うい「復活」

 2011年10月、突然、社長を解任されたマイケル・ウッドフォード氏の告発で発覚した巨額の損失隠し事件から3年。オリンパスは「原点に戻る」を合言葉に笹宏行社長の下で順調に回復しているように見える。15年3月期の業績見通しは前年比約7%増の7600億円の売り上げで、880億円の営業利益、450億円の純利益を見込み、復配も視野に入っている。株価も事件前の水準を回復。損失隠し発覚で積み上がった6300億円の有利子負債は500億円のソニーへの第三者割当増資や昨年、欧米で行った公募増資1126億円、利益金で毎年減らし続けた結果、3650億円に減少。内視鏡を中心とした事業も堅調だ。だが、昨年、バイオ事業を進める米子会社整理で130億円の黒字予想だった最終利益が40億円の赤字に変わる可能性があると発表し、株価が急落したこともある。株主からの損害賠償請求訴訟も抱えている。本当に復活したか。

損失隠し事件で株価は6分の1に急落  事件は就任半年で社長を解任されたウッドフォード氏が解任の経緯と不可思議なM&A(企業の合併・買収)疑惑を公表したことに始まる。同社がバブル期の巨額損失を隠し続け、野村証券出身者の勧めで異常な高値で企業買収を行い、巨額の謝礼を払うだけでなく、有価証券報告書をごまかし続けていた。表面化後、同社は第三者委員会を設置、その調査から巨額の損失計上を先送りして隠していたと発表。「トップに権力が集中し、ワンマン経営が続き、他の取締役は発言すらしなかった」ことを主因として挙げた。

 発覚直後から3000円前後だった株価は6分の1の500円まで急落。業績も急降下した。13年3月期の売り上げは事業の売却も加わって前年から1000億円も下回る7439億円。14年3月期はさらに300億円下回る7133億円に落ち込んだ。純利益も12年3月期には490億円の赤字を記録。自己資本比率は4・6%まで落ち込んだ。製薬会社や医療機器メーカーは不測の事態に見舞われるリスクを抱えていることから自己資本比率は50%程度を維持するのが当たり前と考えられている。当時、ある幹部社員が「倒産するか、それともどこかに吸収されるのではないかと思った」と語ったが、それも当然だ。

 だが、経鼻内視鏡を製造販売する富士フイルム、医療機器メーカーのテルモ、医療分野に進出したいソニーの3社から提携を持ち掛けられ、オリンパスは提携相手にソニーを選び、500億円の第三者割当増資を行ったことで財務は安定し、危機を切り抜けた。以後、笹社長の下で医療機器を柱に据えた事業の再構築に向け、不採算事業の整理、人員合理化、巨額に膨らんだ有利子負債の圧縮に励んでいる。

 事件後の12年度は世界30カ所の製造拠点を22カ所に集約し、正社員・パート合わせて6000人減の合理化を実行。さらに内視鏡に代表される医療事業、顕微鏡などのライフサイエンス・産業機器(現在は科学に改称)事業、カメラやICレコーダーの映像事業に並び、もう一つの柱である情報通信事業を譲渡。同事業の譲渡で13年3月期の売り上げは前年比12%減の7439億円に減少したが、ソニーへの第三者割当増資で得た資金と利益で有利子負債を820億円減らすことができ、危機的水準だった自己資本比率は15・5%に急上昇した。

 13年度も借金減らしが続く。海外で実施した公募増資で得た1126億円の資金で青森、福島県白河、会津若松の内視鏡工場を増設したが、増資資金の一部と円安による利益で負債800億円を返済。自己資本比率は33%(14年6月末)に達した。期中に米ストライカーバイオテックから骨形成タンパク質に関わる事業を買収して始めた赤字続きのオリンパス・バイオテックの清算を発表。14年3月期決算が130億円の黒字予想から40億円の赤字になる可能性を公表したことで株価が急落する一幕もあった。実際には損失は確定せず、前年比約70%増の136億円の純利益を確保している。さらに15年度は4〜6月の第1四半期に81億円の最終黒字を達成し、200億円の有利子負債を返済。支払利息は格段に減少している。15年3月期の売り上げこそ約7%増の7600億円の予想だが、最終利益は450億円が見込まれ、復配が視野に入っている。数字で見る限りオリンパスは復活したといえる。

画期的な製品が突如出現する「落とし穴」  だが、事業そのものは大丈夫なのか。売り上げの75%を稼ぐ医療部門は好調だ。同社の消化器内視鏡は世界で7割のシェアを占める。不祥事が起きても代替の内視鏡はなく、製品に不具合があったわけでもない。損失隠し事件騒ぎの中でも売り上げは落ちなかった。それどころか、急速に広まっている腹腔鏡下手術向けの外科内視鏡分野に参入。世界市場の2割を目指し、今や攻めの体制だ。落とし穴はイスラエルのメーカーがカプセル内視鏡を開発したように、画期的な製品が突如出てくることだ。消化器内視鏡はオリンパスのドル箱だけにカプセル内視鏡のような新製品が出てくると、屋台骨を揺るがす。

 本業だったカメラ事業は13年度まで4期連続の赤字。コンパクト・デジタルカメラはスマートフォンに押され、開発を凍結。高級品にシフトした。一眼レフカメラからも撤退を決め、ミラーレス一眼カメラと高級コンパクトデジカメだけを製造している。カメラはメーカー各社が苦戦中だが、車の自動停止装置への応用のように利用範囲は広い。特に医療機器メーカーにとって精巧なカメラは欠かせない。それだけに技術の粋を集める一眼レフカメラからの撤退は惜しまれるが、再建のためにはやむを得ないのかもしれない。「カメラ部門はミラーレスに絞ることで今期は黒字化できる」(幹部)という。

 だが、同社を救ったのは内視鏡が圧倒的に強かったこと。それだからこそ、第三者割当増資、海外での公募増資ができたといえる。

 さらに、円安に助けられた幸運もある。同社を支える内視鏡は国内より欧米市場の方が大きい。輸出代金のドルが80円か105円かでは懐に入る金額が違ってくる。原発が停止し、原油、液化天然ガス(LNG)を輸入に頼っている間は貿易赤字が続き、円安基調だが、アベノミクスが掲げる「強い経済」が実現すれば円高に進み、アベノミクスが失敗すれば「異次元の金融緩和」が終わり、円高に戻る可能性もある。いつまでも円安メリットに頼るわけにはいかない。

株主の訴訟請求総額は860億円  しかし、同社の不安は別のところにある。まず、損失隠しが発覚し株価が急落したことで損失を被った投資家から起こされた損害賠償請求訴訟が続いていることだ。訴訟は20件を超え、総額は860億円に上るともいわれている。順次、和解も進んではいる。昨年9月はアメリカの投資家が起こした集団訴訟の一つに対し2億6000万円を支払うことで和解。国内の事件前に第三者割当増資を引き受けたテルモが起こした66億円の損害賠償請求事件では、オリンパスが60億円を支払うことで和解した。さらに同社は「110億円の損失引当金を積み立てている」と説明している。だが実際は、前期に170億円を積み立てた中からテルモとの和解金を支払ったことで110億円に減少した数字にすぎない。これからも和解を順次進めなければならず、もっと引当金を積み増す必要に迫られるだろう。

 もう一つの不安はソニーとの関係だ。提携を結び、増資を引き受けてもらい、さらに「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ」なる合弁会社を設立した。合弁会社は次世代テレビとして話題の「4K」と呼ぶ高精密画像を使う3D画像の外科用内視鏡を開発するという。オリンパスの精密技術とソニーの最先端の映像技術を組み合わせれば最高の医療機器が生み出されそうに見える。ソニーは細胞分析装置という優れた医療機器を持っているが、これはソニーの幹部が東大医科学研究所の教授から「使いやすい細胞分析装置を作らないか」と勧められたのが発端だ。だが、ソニーは医療関係者との接点がほとんどないため何が必要か、次に何をつくったら良いのか分からない。その壁を突き破れるのがオリンパスとの提携であり、合弁事業だ。

 だが、この合弁事業は同社にとってもろ刃の剣だ。ソニーはオリンパスが持つ技術と、医療・医学界との人脈を吸収できるが、同社はソニーからどんな技術を吸収できるか。3K画像は今でこそソニーが最先端を走っているが、じきに各社が手に入れてしまう。オリンパスがソニーの傘下に入るつもりなら合弁事業は歓迎できる。株価も上がるだろう。だが、オリンパスが独立独歩を貫くことは難しくなるかもしれない。しかも、今のソニーは昔のソニーとは違う。経営トップは数代前から外資に多く見られるようにソフト重視になっている。オリンパスがあくまで独立した企業でいることを目指すなら、内視鏡に並ぶ革新的な医療機器を開発し、逆にソニーを吸収するような意気込みを見せることだ。

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