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グラクソ・スミスクライン

グラクソ・スミスクライン
子宮頸がんワクチン問題で取り沙汰される 松あきら前参院議員との関係

 再び「ワクチン危機」になりかねない事態である。子宮頸がんワクチン問題だ。東京・杉並区の中学1年生が2回目の子宮頸がんワクチン接種直後に頭痛、関節の痛み、足のしびれ、震えなどの症状が現われたことが報道されて以来、各地で同様の症状が出ていたことが明らかになった。

 厚生労働省は「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」を開き、43例を検討したが、因果関係は不明。通常起こり得る副反応なのか、別の原因によるものか判断がつかなかった。「さらに調査が必要」とし、接種中止は必要ない、と結論付けた。しかし副反応被害の報道に当惑した厚労省は、子宮頸がんワクチンは2010年に国の助成が始まり、予防接種法改正で今年4月から定期接種になったばかりなのに、「接種を中止しないが、推奨はしない方針」を決定し、予防接種対象者に個別の案内を出さないよう各自治体に勧告した。医療機関に副反応リスクを説明させてしまおう、という役所らしい発想だが、勧告された自治体は困惑。千葉県野田市のように「説明しても市民には分かりにくい。接種して良いのか判断がつかない」と中断を決めた所も現われた。

 日本を「ワクチン後進国」にしたのは副反応騒動だった。昨春騒ぎになったポリオワクチンでは、アメリカから不活化ワクチン技術を導入し、生産を始めた直後に不足が判明、生ワクチン輸入が必要になったときのマスコミの過熱報道が第一幕。MR3種混合ワクチンでは、重篤な脳症の副反応にワクチン接種中止の大報道から接種者が激減し、定期接種法を改正して任意接種に追い込まれたことが決定的になった。目下騒ぎになっている風疹の流行も任意接種に切り替えたことが元凶だ。

定期接種化への不純な動き  だが、今回の子宮頸がんワクチン騒ぎは少々違う。そもそも定期接種させる必要性があるのか、と指摘する医療関係者もいるのだ。ポリオワクチンやインフルエンザワクチン、MR混合ワクチンほど必要性が高いのか、という疑問である。「そもそもHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染する確立は低い。当然、ワクチンを接種して子宮頸がんを予防する効果はさらに低い。むしろ、検診をしっかりした方が良い」という説さえある。

 しかも疑惑を招いているのが子宮頸ワクチンメーカーの英グラクソ・スミスクライン(GSK)と政治家との関係、ロビー活動問題である。すでに週刊誌で報道されているが、子宮頸がんワクチンの定期接種化への動きに不純を指摘されている。

 子宮頸がんワクチンとして使用されているのはGSKの「サーバリックス」と米MSDの「ガーダシル」である。サーバリックスは16型と18型の2価、ガーダシルは16型、18型に加え、6型、11型も予防する4価である。大きな差はないが、世界120カ国で使われている子宮頸がんワクチンはガーダシルの方が多い。ガーダシルが1億1200万接種分で、サーバリックスはその3分の1の3800万接種分といわれている。しかし、日本ではガーダシルが昨年承認されたのに対してサーバリックスの承認は2年早かったため、接種人数が圧倒的に多く、695万人に接種されている。

 指摘される疑惑は、GSKがサーバリックスの承認申請をしたのが07年で、時を同じくして公明党の松あきら参議院議員(任期終了で今夏引退)が旗振り役となって、早期承認、公費助成を要求しだしたことで浮上した。09年に承認されたが、それに合わせるかのように公費助成が始まり、定期接種化へと動きだす。松議員の動きに対して永田町では「夫がGSKの顧問弁護士だから」というが駆け巡った。

 だが、これはあってはならない「利益相反行為」ではないのか。MSDがガーダシルの承認に一歩も二歩も遅れたのは、GSKと密接な関係にある議員の活動のためだったとしかいいようがない。それだけにGSKと利害関係者の活動で子宮頸がんワクチンが始まったという〝悪い前例〟を作ってしまった。

 GSKは決していいかげんな製薬メーカーではない。売り上げ3兆円(12年)に達する世界第4位の大手製薬メーカーだ。扱う医薬品も医療用医薬品からOTC薬(一般用医薬品)、さらに盛んにテレビCMを流す医薬部外品の歯磨き粉「シュミテック」や入れ歯洗浄剤の「ポリデント」まで幅広く製造・販売する。特に得意なのが吸入による呼吸器系とワクチンだ。呼吸器系では、例えば、抗インフルエンザウィルス治療薬の「リレンザ」がある。3年前、新型インフルエンザによるパンデミックが心配されたとき、抗インフルエンザ薬はロシュの「タミフル」とGSKの吸引式リレンザしかなかった。日本では吸引式に慣れていないため、専らタミフルを備蓄したが、欧米では呼吸器疾患に対して吸入薬を好むことからリレンザが用いられる。看板商品になっている気管支拡張剤の「アドエア」、吸入ステロイド剤の「フルタイド」もある。吸入剤以外にも、うつ病薬の「パキシル」、前立腺治療剤の「アボルブ」等々、多彩である。さらに研究開発中のパイプラインも数多い。

アバンディア問題という前歴  ワクチンではサーバリックスとロタウイルス予防の「ロタリックス」を日本で販売しているが、インフルエンザワクチンやMR混合ワクチンなどワクチンの種類は豊富。サノフィ・アベンティスと並ぶワクチンメーカーでもある。実際、ワクチン事業に乗り出した第一三共がGSKと合弁でジャパンワクチン社を設立したことでも分かるし、インフルエンザワクチンを緊急輸入したときのワクチンはサノフィ・アベンティスとGSKのワクチンだった。実は、このときも松議員とGSKの顧問弁護士を務める夫君が活動した結果、という噂が厚労族議員の間で絶えなかった。

 それはともかく、副反応問題に揺れる子宮頸がんワクチンに一抹の不安が募るのは、GSKには大問題になった〝前歴〟があるからだ。ご存じの人も多いはずだが、アメリカで大騒動になった2型糖尿病治療薬「アバンディア」問題だ。アバンディアは99年に米食品医薬品局(FDA)から承認を受け全世界で16億㍀を売り上げた大型新薬だった。ところが、07年、米クリーブランドクリニックの医師が、「アバンディアと対照薬のアクトス(武田薬品工業)の投与例とを比較すると、アバンディアでは心筋梗塞のリスクが43%増加し、心血管障害による死亡リスクは64%も高くなる」という論文を『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』誌に発表したことで、アバンディアをめぐる騒動が巻き起こった。

 むろん、GSKは「論文のメタ解析手法は適切ではない。血管リスクが上昇しているとは認められない」と反論。しかし、アバンディアの一部メタ解析を行った医師がアバンディア投与はメリットよりも合併症悪化リスクが高かったと報告したことで騒ぎは拡大。FDAの諮問委員会はアバンディア販売続行を支持したが、「服用により心不全の発現、あるいは悪化を招くリスクがある」と、最悪の黒枠警告が付けられた。

 これでも騒ぎは収まらず、大学教授に多額の講演料を支払っていたことを英『ネイチャー』誌が暴露。また、上院議員が2年間の調査報告書を議会に提出し、GSKは心血管リスクを隠していたと追及。さらに市販当時にリスクを指摘した医師に対し、訴訟をほのめかす脅しを行った(GSKは否定)という発言も飛び出す。アバンディアだけにとどまらず、18歳未満の未成年には禁止されている抗うつ剤パキシルを未成年に売る販促活動をしていた、別の抗うつ剤「ウェルバトリン」を体重減少、性的機能不全薬として販売していた、ということまで露見した。各地でアバンディアに関する訴訟が起き、米連邦検察局もGSKを告訴する事件に発展。最終的に司法省との間でGSKが有罪と民事責任を認め、30億㌦を支払うことで司法取引が成立。米保健省は5年間のコンプライアンスに関する合意や販売に対して質を重視することなど、5項目の契約を結び決着した。

FDAから指摘された安全性への疑義  アバンディアの販売続行は認められたが、継続使用者以外使われなくなり、同社の医薬品リストからも消えている。先頃、FDAの諮問委員会はアバンディアに対する条件が厳し過ぎると、緩和を勧告したが、特許切れが間近に迫っている。今更販促活動を再開するわけにもいかないだろう。 子宮頸がんワクチンの副反応被害かどうかの問題でも、メーカーの一社がGSKだけに、いやでもアバンディア事件が思い出される。何しろ騒動でFDAから「安全性に関する一部データを報告しなかった」と指摘されたからである。しかもサーバリックスの承認申請時期と、GSKと利害関係を取り沙汰される国会議員が子宮頸がんワクチンの必要性、公的負担を叫んだ時期とが、奇妙にも近似するのである。その国会議員が国会で子宮頸がんワクチンを取り上げて厚労省に質問し、必要性を訴えれば、厚労省は応えなければならなくなる。たとえ利害はないと主張しても世間はその通りに受け取らない。疑惑となってしまう。

 立派な製薬メーカーであるはずのGSKだが、安全性のデータだけでなく、利害関係を取り沙汰される人物との疑惑を払拭しなければ、副反応騒ぎは拡大し、ひいては日本をワクチン後進国にさせたかつての〝悪しき前例〟と同じことが起こりかねないのである。

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