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イオン

イオン
大物官僚OB受け入れ目的は 利益誘導不祥事対
イオンは岡田卓也名誉会長相談役が築き挙げてきた会社である。卓也氏の長男、岡田元也氏が社長に就任したのは1997年。第一勧業銀行総会屋事件の影響で、同行出身の前任者が逮捕されたため、急な登板だった。元也氏は拡大路線をひた走ってきた。まるで「第2のダイエー」を彷彿させる。それはセブン&アイ・ホールディングス(HD)の財務諸表と比較すれば、一目瞭然だ。イオンは企業の存続安全性に一番大切なファイナンス力や資金力が極めて脆弱で、元也氏が目指す中国への積極展開ができる状況にないことは、金融・証券界の財務分析プロなら知っている。

 その中国では、尖閣問題に端を発した反日暴動でイオンは店舗を破壊された。元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏を中国大使に起用したのは、岡田社長の実弟で野田佳彦内閣の副総理を務めた岡田克也氏。「イオンの中国進出のため丹羽氏起用で兄弟連携したのでは」と言う業界関係者もいる。

 権力とイオンの関係は、これだけではない。イオンは高級官僚の天下りを積極的に受け入れている。例えば、日本たばこ産業会長、横浜銀行会長と渡り歩いた小川是・元大蔵事務次官が社外取締役を務めていたことがあった。今は、元検事総長の但木敬一氏を社外取締役に迎えている。但木氏といえば、無罪判決が確定した小沢一郎裁判の発端になった陸山会事件を「でっち上げた」検察のトップだった。さっそく『日刊ゲンダイ』に「小沢潰しの〝頭目〟元検事総長がイオンに天下り」と取り上げられた。その但木氏は法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」の委員を務め、検察改革を議論するのである。そんな重職に就いていること自体、退官後も検察への影響力を持っていると国民の目には映る。

 もう一人、グループのイオン銀行では財務省理財局長、金融庁総務企画局長を歴任した原口恒和氏を会長に迎えている。金融庁は銀行を監督する部署だが、同時に証券取引等監視委員会を抱える官庁だ。検察庁大物OBに金融庁大物OBの天下りとくれば、単なる利益誘導とは思われない。イオングループは何か「ただならない問題」でも抱えているのではないか、と思えてくる。

金融庁OBはイオン銀行黒字化の恩人  イオンにもそれなりの理由がある。例えば、原口氏はイオン銀行にとっては〝大恩人〟なのだ。「金融庁は赤字続きのイオン銀行を黒字体質にしてくれた恩人。OBを会長に迎えるのは人間の礼節」というのは、あるイオン関係者。

 「イオンがセブン銀行に対抗して2007年にイオン銀行を設立した際、メーンバンクのみずほコーポレート銀行は大反対した。法人融資をしないことを条件に承諾してもらったが、開業まもなくリーマンショックが起き、収入の柱にしていた住宅ローンが低迷、4期連続の赤字となり、設立3年で黒字にするという新銀行設立条件を守れなかった。見かねた金融庁と預金保険機構は破たんした日本振興銀行の不良債権を除いた優良債権部分を24億円で買収させてくれた。これを機に法人向け融資ができるようになり、黒字体質を築けた。次には住宅ローン部門の強化を図るためにも金融庁の力添えが必要。原口氏を会長に迎えることで飛躍が見込める」(イオン銀行関係者)

 これでは「官業癒着」ではないか。「かつて金融危機で政府から出資を得ながら、大手メガバンクは財務省からの人材を受け入れなかったことをイオンは知らないのか」と金融界の人物。

 イオングループは持ち株会社のイオン傘下に総合スーパー、「マックスバリュ」の名前に代表されるスーパーマーケット、ショピングモールを建設運営するデベロッパーのイオンモールの3事業を中核とする。このほか、ディスカウントストア、コンビニのミニストップ、「ハピコム」をグループ名にするドラッグストア、イオン銀行やイオンクレジットなどの金融と事業は幅広い。いまや営業収益5兆3000億円の日本一の流通小売業だ。

 しかし、グループ内は合併したり買収したり、資本提携しただけの企業などが存在し、グループ内で利害が重複する企業も多くなった。加えて、セブンイレブンとセブン銀行の二本柱で稼ぐセブン&アイHDと違い、イオンはモールだけが支える体質の弱さを持っている。そのモールも大規模な郊外型は埼玉県越谷市のイオンレイクタウンが最後。それも失敗が明らかになり、イオンはつぶれる瀬戸際に立たされた。みずほコーポレート銀行が救済とイオンの体面を保つため取った措置が投下資金800億円の証券化で、引き受け手は同銀行一行の救済融資だった。

寺島薬局インサイダー疑惑の飛び火懸念  一方、中核事業の総合スーパーや食品スーパーは一向に売り上げ回復の兆しが見えない。それどころか衣料品はユニクロに、日用雑貨品はドラッグストアに客を奪われた上、最近は食品までが近くのコンビニとドラッグストアに侵食されている。さらに、積極的に「全品値下げ」を宣言すると、ライバルのイトーヨーカ堂や西友も値下げ競争に加わる有り様で、苦戦を強いられている。

 天下りを受け入れたことで売り上げ増が期待できるとも思えない。やはり、なんとなく不祥事の出来に備えたのではないのかと勘繰る向きが多い。

 では、イオングループは問題を抱えているのだろうか。ビールメーカーに安く卸すように要求したとか、納入業者に社員を派遣するように強要したなどという話もあるにしても、元検事総長の出番ではない。ひょっとすると、イオンのドラッグストアグループ、ウエルシアホールディングス(HD)傘下の寺島薬局の訴訟問題ではないのか。ウエルシアHDの子会社ウエルシア関東が2008年、株式公開買い付け(TOB)により寺島薬局を子会社化した直後、寺島薬局が突然、当時の役員を解雇。役員らは不当解雇と訴訟を起こし、現在も裁判が続いている。このTOBでは、寺島薬局の当時のオーナーが大和証券エスエムビーシー(現・大和証券キャピタル・マーケッツ)に依頼した経営陣買収(MBO)価格と、ウエルシア関東のTOB価格を天秤に掛けていたことに加え、オーナー一族やTOB側のウエルシア関東の関係者、イオンのドラッグストア担当部門が事前に寺島薬局株を購入していた「インサイダー疑惑」が飛び出した。

 だが、証取も金融庁も動かない。「オリンパスのように社会問題、国際問題にでもならないと摘発しない。イオンが迎えた高級官僚の影響ではないか」(社会部記者)と指摘する声もある。

 実際、このインサイダー疑惑事件では元官僚の影を感じさせる事態が起きている。当初、寺島薬局は大和証券SMBCとアドバイザリー契約を結んだ。しかし、TOB買収後、ウエルシア関東と寺島薬局はアドバイザリー報酬7000万円の支払いを拒否、債務不存在の訴訟を起こした。ところが、じきに訴えを取り下げ、アドバイザリー報酬を支払った。寺島薬局元役員との訴訟は裁判長の和解案を蹴ってまで続けているのに、なぜ大和証券との訴訟は早々と取り下げて報酬を支払ったのか。関係者は一様に不思議がったが、納得したのは天下り官僚の存在だった。「イオンの社外取締役の但木元検事総長は、大和証券グループ本社の社外監査役にもなっている。イオングループが大和証券SMBCを訴えると、但木氏が股裂きになってしまう。そんな事情から訴訟を取り下げ、アドバイザリー報酬を支払ったのだろう」(ある関係者)とささやかれている。

 加えて、政権も変わり、自身の国家、国民への責任として証取がインサイダー疑惑の調査に動けば、イオン幹部も対象とならざるを得ない。岡田社長が判断者となれば、例外にはならないだろう。

 事情に通じた証券マンは「証取が調査に手を付けなかったのは、イオン銀行会長に就任している元金融庁企画総務局長の原口氏の名前があるからだろう」と推測する。ある外資系証券会社幹部は「インサイダー疑惑を事件化してほしくないウエルシア関東と寺島薬局、さらに飛び火することを嫌うイオン側の意向を証取が汲み取っていたのでしょう。情けない」と話す。

 イオンはどう考えているのか。同社に取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。

「連邦経営」で統制難しいグループ企業  かつて「ジャスコ」を名乗っていた時代、岡田卓也名誉会長は各地のスーパーと合併、提携するとき、「連邦経営」と称した。持ち株会社制に変えたとき、スーパー部門はグループ内の重複や競争を整理したが、ドラッグストア部門はほとんど手付かずのまま。そのため、イオンはハピコムを構成するドラッグストア各社の扱いに苦労してきた。これまでにスギ薬局(本社・愛知県)、ドラッグイレブン(同・福岡県)が脱退。子会社化したCFSコーポレーション(同・横浜市)もアインファーマシーズ(同・札幌市)グループ入りを表明。イオンの岡田社長がテレビに出て株主に訴えるプロキシーファイト(委任状争奪合戦)を行ったのも記憶に新しい。

 インサイダー取引、株価操縦疑惑で問題となっている寺島薬局でも、最もイオンを嫌い警戒していたのはオーナーだった寺島孝雄氏といわれる。なんともはや、面従腹背、魑魅魍魎の世界がイオンのドラッグストアグループのようだ。天下り官僚が実態を知らず小事に利用されかねないことも気にかかる。

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